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スタッフコラム

「山歩き」

2016.02.05

 今回は「山歩き」のお話をさせて戴きます。(ですが趣味の話ではなく、義務の話です。)
 数年前、婿に入った私に課せられた宿題の一つが、ご先祖様が遺して下さった山の“境界線(他人の山との)を覚える”事。
覚えるだけ…簡単だな…と最初言われた時は軽~く考えてました。

 婿に入ったのが初夏でしたので、休日に「山に行かないの?」と義父に聞いた所、「今の季節は山に入ると大変だから…秋にね!」と言われ「???」。
暑いから?涼しくなってからのんびり山歩き出来るなら、新しい趣味として“アリ”かも!と想い納得。

 夏が終わり、いよいよ秋になりました。
「行けるか?」と聞かれ、待ってましたとばかりに「ハイ!」と返事。
“山デビュー”の日を迎えたのでありました。

 次の日の朝、庭先に出ると、軽トラの荷台に“謎”の木の山…何コレ???
謎のまま山の入り口に到着…って入り口ドコ???
おもむろに手斧と鋸を腰からぶら下げ、右手に鎌を持ち左手で“謎”の木を抱え上げ歩き出した養父。
見様見真似で同じ格好に変身して歩き出しましたが…(だからぁドコから入るんだよ!?)。

「さぁ、ここからや!」と立ち止まった前に藪!(マジか!)。

 悠々且つスイスイと藪に吸い込まれて行く養父。
心の整理をして後を追おうと藪に脚を踏み入れましたが、体に絡み付く雑木と笹でなかなか前に進みません。
前方に養父が手斧を振るう姿が見えます。(そうか!切ればいいのか!)
邪魔な笹を切りにかかる私…切れません…(なんで?)。
上から私の様子を見かねた“師匠”から「幹」に対して斧を斜めに入れろと声をかけられ、振ってみるとスパッ!と見事な切り口。
ココで転んだら相当な怪我をするなぁと思いつつ周りを見ると、いたる所に笹の切り株が!
(怪我どころじゃ無いね…)。

後で解ったのだが夏を避けた理由は、この草木の勢いが静まる(枯れる)の待っていたのと虫や蛇が多い為。

 ようやく立ち止まっていた師匠に追いつくと、抱えていた謎の木から枝を切り、切り口の皮を鎌で剥いています。
「この“アテの木”は日陰でも強く、こうして植えておくと、10本の内、1本くらいは追いついて(根が張って)枯れないから毎年、山の境目の解りにくい所に植えとる。
コレの見回りと植え直しをマメにやっとかんと境目が解らんようになる。
今では山を持っとっても、金にもならんし体が酷いだけやけど、ご先祖様が遺してくれた物だから出来れば大事にしてかれかぁ(方言)。」
と言いながら地面に植えて(差し込んでいくと言った感じ。)いきます。

なるほどなぁ…と“山仕事”の一端を理解しつつ、手伝いながら一日かけて山を歩いてきました。
(とは言え山の一“のり面”だけでしたが…)

…それから数年…毎年、春(3月~5月初旬)と秋(10月中旬~12月初旬)に数回、「山歩き」をしてきました。

今では一日で3カ所程の山の“境界線”を踏破できる程になり、手斧を振るのもお手の物。
(師匠から見れば全然まだまだでしょうけど。)

この冬が明ければ、いよいよ一人で山に入って見ようかと思っています。
…義務が趣味に変わる事を願って…(でもクマには会いたくない!)

— T.K —