社員体験記
第25回 : Kさん 設計経験9年
◆ 親の影響で設計業務へ
設計・製図業務へ入るきっかけは、父親が設計事務所を経営していたため。
厳しい父に厳しく育てられ、仕事でも「図面はいつでも書けるので現場を見ることが大切」という“現場主義”の考えを知らず知らずに植え付けられた。
はじめは自動車の板金工場で働いていたが、これからは頭を使って手に職をつけなければならないとの考えで、設計業務に進むことを決意。
とは言っても何の知識もないので、ポリテクセンターで半年間、製図や機械加工・CAD操作などの基本的な勉強をしてアルパイン設計に入社。
◆ 情報機器で設計業務を一から経験
アルパイン設計に入社して最初に派遣されたのが情報機器開発の会社。
そこでは製品を一から作るため試作装置から始まる。その試作装置ではいろいろなアイデアを試す設計をし、それを評価して改善を加える作業を行う。
また、製品化までにデザインレビュー(DR)を何回も行い、いろいろな部署からいろいろな観点から指摘を受ける。
その中で製品化前に問題点を洗い出すのであるが、これがなかなか厳しくて、設計にとっては大きな関門であり対応に苦慮することも多い。
実際の製品では、薬品の検査装置やプリクラや情報処理端末の筐体設計などを経験。
情報処理端末には現金を扱うものもあり、法規制や特別規格などもクリアしなければならず特殊な対応に苦労した。
板金設計が多いが、3D-CADの操作も覚え、樹脂成型の技術など設計に必要な技術や強度関係の注意点などが身についた。
◆ 製品による考え方の違いが明らかに
現在は産業機械のメーカで働いているが、情報機器とは設計の考えがまったく異なる。
基本的には一品物であり、試作装置などはない。作ってから不具合などに対応するが、装置が大きいので分解や手直しに相当な時間がかかるため、ミスによる仕損も大きくなる。
製品も機能を重視して動けばOKで、外観などはあまり気にしない。
汎用市場に出回る製品と工場内に納められる製品の違いであろう。
装置を触りながら自分で設計をしていくという観点では、自分の立場からすると何となく情報処理機器の方が設計という感覚に近かったような気がする。
◆ 大きな失敗も経験
【仕様にない部品を使って大幅なコストアップ】
治具内にあるクランプ装置の設計で、設計仕様をもらって設計したが、仕様にないロータリーノズル(回転継手)を使って設計してしまい、コスト的に合わなくなってお客様からクレームを受けてしまった。
実はロータリーノズルを使うと簡単にできるのだが、購入品でコストが高いために仕様書上は別の方法で設計するようになっていたのを、安易に使ってしまって製品が完成するまで気が付かなかったもの。
コストが合わなくなってお客様と交渉しながら、結局は大きな損金を出して決着した。
【輸送時にコンテナ内で装置破損】
加工機の設計で、設置状態では問題なく稼働するが、お客様に納めるためにコンテナで搬送時、船積での振動衝撃で分割したベースが破損してしまった。
φ16ボルトで固定されているが、そのボルトが折れており、海外へ輸送される時は相当な振動衝撃が加わると予想される。
急遽、全数φ20のボルトに変更して対応したが、現地据え付け時期が大幅に遅れてしまった。
◆ 一番たいへんだったのは深夜や徹夜が続いたとき
情報処理機器の設計で、短納期で出図納期が迫った時は、2時・3時の深夜残業や徹夜勤務が続き本当にしんどかった。CADの前で寝てしまい、起きて慌てることもあった。
製造工場も工程を空けて待っているので、出図時期は伸ばすことはできない。
”納期は絶対”という厳しさを教えられるとともに、設計のつらさも十分身に染みた。
◆ 今後の目標は設計者として一人前になること
どのような状態になると一人前と言えるのか? 自信を持てるのはいつなのか?
たぶん際限がなく、永遠に続くのだと思う。
そのためにはコツコツと毎日の努力の積み重ねが大切だと考えている。