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スタッフコラム

1円切手

2021.04.20

元日に配達される年賀状には、日本郵政グループからの挨拶状と思しき紙が添付されている。
本年明けの挨拶状は、日本に郵便の仕組みを築いた、前島密(まえじまひそか)の信条が書かれていた。

「縁の下の力持ちになることを厭うな 人のためによかれと願う心を常に持てよ」

特別目を引く内容ではない。日常であれば受け流してしまう。
しかしどうしてか、本年の元日に挨拶状を見た時から印象に残っている。

前島密は1円切手の肖像の方で、近年切手に触れていない自分にはすでに懐かしい。
改めて名前を伺うと、ああ、1円切手のあの方か、と。

前島密の功績は郵便の仕組みのみならず、多岐にわたるとある。
信条を素直に解釈すれば、当時はまだ無かったものを興したり広めたり、陰ながら尽力されたのだろう。
インターネットで画像を見てみると、厳めしい表情からもその強かな人柄が窺い知れる?

改めて言葉の意味を考えてみたい。

現代において「縁の下」で思いつくことはインフラ関連。
改めて調べると、インフラは”infrastructure”(インフラストラクチャー)という英語で、
社会基盤や下支えという意味を元々持つ。

身の回りには様々なインフラやライフラインが存在するが、日々意識する頻度は少ない。
その意味では確かに「縁の下」と言えるが、税金や各種料金で少なからず対価を支払い、
全てでないにせよ、公共施設(学校、病院等)や産業基盤(交通、水道、通信等)を知らない者はいない。

個人の解釈として「縁の下」の根本は後ろの文にあると思う。人のためによかれと願う心。

心や思いは目に見えないが、行動の元となるもの。
よかれと願い行動した結果、成功するか裏目に出るかは分からない。
よかれと願う心がせめて相手に伝わればまだ良いが、そうなるとは限らない。

人には他人から認められたい、尊重されたいという承認欲求があり、自分自身も多少自覚がある。
報われるとは限らず、欲求に抗うことは苦痛であるが、公私を問わず、
「人のためによかれと願う心」は自分のどこかに持ち続けたいと思う。

P.S.
日本郵便によれば、約70年ぶりとなる新しいデザインの1円郵便切手を
4月14日に限定発売するそうだが、現1円切手の販売も続けられる。
現デザインは廃止せず、挨拶状で触れて、「原点を忘れず」というところか。

— H・S —