スタッフコラム
ショートサーキット
皆さんは「ショートサーキット」という言葉をご存知でしょうか。
ネットで検索すると何やら空調用語だったり、映画のタイトルだったりします。
が、今からお話する場で用いられた意味はそれではありません。
以前働いていた会社での事です。
私が入社して1、2年のペーペーの頃の、とある会議。
出席者は課長含め課員全員、部長、取締役という錚々たるメンバー。
ペーペーな自分にとっては部長、取締役が出席するというだけで緊張するのに、その会議の雰囲気たるや重く、暗く、課員全員下を向き俯いている。
ドナドナの歌詞の如く、これから全員どこかに売られるんじゃないかといった感じである。
議題は「納期遅れに対する緊急会議」
お客様に納品する商品がこちらの手違いで何やら納期遅れになるかもしれないとの事。
ちょっと他人事っぽい書き方ではあるが、入社1,2年のペーペーなんてこんなもんである。多分。
商品の金額はおよそ500万、機械に取り付ける部品。
これがなければお客様は機械を動かす事が出来ず、試運転、調整、出荷、更にはエンドユーザーでの本生産まで遅れる事になり大問題である。
お客様への対応、仕入先への確認と話しは進み、商品の運搬ルートの話題になった時、担当者からの案に対して、部長が威厳に威厳を重ね地図を片手にこう言い放ったのである。
「そのルートじゃだめだ!。ここをショートサーキットしてここに出るんだ!!」
その語気は凄まじく課員全員凍り付き、まさにアナ雪の世界。
いや、でも違和感ハンパない。
入社1、2年の自分でも思ったので、きっと部長以外全員そう思ったはず。
「部長!それショートカットの事ですよね!近道するって意味ですよね!!」
なんてとても言えない。
なにせ部長は鬼の形相のままである。
世が世なら「そちに切腹を申し渡す」と言われることこのうえなしである。
結局、ペーペーを含む殆どの人は発言する機会もないままその会議は終了した。
その部長とは縁があり何十回と一緒出張に行く事となる等、前の会社では大変お世話になりました。
退職の旨を伝えた時、私は恥ずかしながらも涙を流したぐらいである。
ただ1つ後悔しているのは、最後の最後まで「それショートカットっすよ。」って言えなかった事。
最後に、
このコラムを読んだ人で、この部長(今は取締役)が誰か想像つく人は何人かはいると思いますが、私がここでこんな事書いた事は決して言わないで下さい。
そしてもし、目の前で「ショートサーキット」と言ったら、その時は優しく「ショートカットですよ。」と教えてあげて下さい。
— K.F —