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スタッフコラム

私とギター

2015.03.05

「このギターは私の宝物である。」

 と言っても、バイオリンでいうところの「ストラディバリウス」の様に高価である訳でもなく、また特別良い音色という訳でもない。
 ごく一般的で、初めてクラシックギターを習う人が持つ様な物である。

 そんなギターでさえ満足に弾きこなせない程の実力しかないが、このギターを見れば人生を振り返る事が出来る。
私にとってそういう存在である。

 私が最初にギターに触れたのは、クラシックギターではなくエレキギターである。
 高校生時代、世はバンドブームであり、国内でも国外でも多くのバンドがメジャーデビューしている。
 周囲を見ても楽器を手にしている人が大勢いて、私もご多分に漏れず楽器、とりわけギターを手にした。

 当時様々な洋楽を聴いていた私であるが、ジミヘン、クラプトン他有名なギタリストが多くいる中、最も影響を受けたのは「Yngwie Malmsteen」というギタリストである。
 他の追従を許さない驚異的な速弾きとクラシカルなメロディーに衝撃を受けた。
彼の様に弾きたい、という思いに至るのは当然の流れであり、早速スコアを入手して音符と対峙する事になるが、予想通りというかなんというか・・、1小節に詰まった音符の数がハンパではない。
 これは普通の人では絶対に真似出来ないなと思い、諦めた。

 そしてそのまま大学へと進学し、ギターからは離れていく事となる。

 私がギターと再会するのは、社会人4、5年目ぐらいだったと思う。

 今度はエレキではなく、アコギでもなく、クラシックギター。
 その頃、仕事も忙しく3か月間休み無しという状況がごく当たり前だったのだが、このまま仕事だけの日々が過ぎていく事に物足りなさを感じ、もう一度楽器でも弾こうかなという軽いノリだった。
 しかし独学では限界を感じていたので、近くの楽器屋で一から習う事にした。

 だがここでも問題が発生する。

 クラシックギターは弦を爪で弾くのが基本なので、爪のケアにはかなり気を使う。
 爪の内側を専用のヤスリで磨き、光沢が出るまでツルツルにしてから弾きはじめる。
 爪の弦を弾く部分がザラザラだと良い音が出ないのである。
 が、私は機械の組立も行っていたので、手は汚れ放題だし、爪は少しでも伸びると機械を組んでいる際にいつの間にか欠けたりする事がざらだった。
 また、出張で金沢にいない事が多かったので、結局クラシックギターの方も1年ほどで挫折してしまった。

 つい先日、北陸新幹線金沢開業キャンペーンCMで、「太田 真佐代」という名前が画面に大きく出た。
 彼女は金沢市出身のギタリストであり、何を隠そう私がクラシックギターを習っていた頃の先生だった。

 あの頃から随分と時が経ち、失礼ながら私の中では頭の片隅へと追いやられていた名前と姿がまさかTVで見られるとは思わなかったので、驚きつつも当時の色々な事が思い出され、感慨深くもあった。

 三度目の正直と言う言葉がある。もう一度ギターを手にしようかな、と思わせるには十分だった。

— K.F —